はり・きゅう(鍼灸)治療とは


 鍼灸治療は、日本・中国・韓国などアジアだけでなく、アメリカ・ドイツ・フランスなどの欧米にも広がり、現在世界100ヵ国以上で採用されている地球上、最も普及した伝統医療になっています。1997年にはアメリカ国立衛生研究所(NIH)が、鍼灸治療の有用性に関する声明を発表しています。 

 鍼灸の治療目的は苦痛を緩和し、本来の回復力を引き出すことにあります。それにはお身体の診察がとても大切で、「四診」により病気の反応がどのようなところに現れているのかを探り、その反応をもとに治療を行って症状の変化を観察していきます。

 

「四診」とは

  1. 望診(ぼうしん):患者さんのしぐさや動作の速さなどを観察します。また顔面にあらわれる色により五臓の状態を診ます。爪や皮膚の色艶などからは、気血の状態やストレスの度合いなどを察します。舌の表面の状態からは主に胃腸の状態と気血の過不足を、舌の裏の舌下静脈の状態からは血の鬱滞と瘀血(おけつ)の存在を察します。
  2. 聞診(ぶんしん):患者さんの声の清濁、大小、調子などから正気の状態を察します。体臭・口臭など嗅覚から得られる情報は身体が熱に傾いているのか否かの重要な判断材料になります。
  3. 問診(もんしん):初診時などに記入していただく問診表や直接お話をお聞きして必要な情報を収集すること。単に症状を聞くだけでなく、身体全体の寒熱・虚実と五臓六腑の状態を知るために、問診者が意識的に質問をして、症状の根になっている部分をつかみます。
  4. 切診(せっしん):「切」とはぴったりと触れること。実際に患者さんの身体に触れて、冷たいところと温かいところのアンバランスや、緊張している場所とその深さなどをみます。

 当院ではこの「四診」を行うことによって、身体全体をくまなく観察し、実際に患者さんの身体に触れて得た情報と、その他の情報を総合して「証」をたて、治療を行います。

 

 

適応疾患


 最近、NIH(米国 国立衛生研究所)の見解として鍼灸療法の各種の病気に対する効果とその科学的根拠、西洋医学の代替治療として効果について有効であると発表しました。鍼灸療法で有効性がある病気には、下記のものがあります。

【神経系疾患】

◎神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー

 

【運動器系疾患】

関節炎・◎リウマチ◎頚肩腕症候群◎頚椎捻挫後遺症◎五十肩・腱鞘炎・◎腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)

 

【循環器系疾患】

心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ

 

【呼吸器系疾患】

気管支炎・喘息・風邪および予防

 

【消化器系疾患】

胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾

 

【代謝内分秘系疾患】

バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血

 

 

【生殖、泌尿器系疾患】

膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎

 

【婦人科系疾患】

更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊

 

【耳鼻咽喉科系疾患】

中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎

 

【眼科系疾患】

眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい

 

【小児科疾患】

小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善


上記疾患のうち「◎神経痛・◎リウマチ・◎頚肩腕症候群・◎頚椎捻挫後遺症・◎五十肩・◎腰痛」は、医師の同意のもとで鍼灸の健康保険の適用が認められています。

はり(鍼)


 当院で多く用いるはり(鍼)の太さは0.16㎜で髪の毛と同じぐらいです。刺したときに皮膚の抵抗が少なく、痛みもほとんどありません。このように細い鍼ですがツボ(経穴)にしっかり鍼を当てる事により、身体の奥底に響くような心地よい刺激を与えて、筋肉をほぐしたり、血行や代謝を促したりすることで、痛みやつらい症状を改善していきます。

きゅう(灸)


 きゅう(灸)はヨモギの葉の産毛を陰干し・精製取したもので、日本では「やいと」のイメージがあり火傷をするのではと思われますが、当院で使用する「知熱灸」「台座灸」は直接お肌に熱が加わらないお灸です。知熱灸はツボの冷え、台座灸はもう少し広い範囲の冷えの治療に使用します。


はりの響きと置鍼


「はりの響き」

 鍼を経穴(ツボ)に打つと身体の奥底から「ズーン」と響くような刺激が現れます。これを「はりの響き」とよび、中国伝統医学では「気至病所」(病のある場所に気が至る)とされ治療効果に重要な役割があるとされています。もちろん初めて鍼を受けられる方や響きが苦手な方もいらっしゃいますので、治療の際は患者さんとご相談しながら刺激量を決めていくのでご安心ください。

 

「置鍼(ちしん)」

置鍼とは鍼を経穴(ツボ)に打った後、10~15分程度安静にしていただく状態を指します。東洋医学的には鍼により気を巡らす効果があります。現代医学的には、緊張した筋肉を緩め、血流を改善させることにより発痛物質を除去し、自律神経(交感・副交感神経)への調整作用があります。

治療の流れ


施術後の注意点

  • 施術当日はなるべく安静にしてください。(帰宅後しばらく横になると治療効果が上がります。)
  • 当日の飲酒は控えてください。
  • お風呂やシャワーは普段通りで構いません。
  • 体が怠くなったり、施術部位周辺に筋肉痛のような痛みや不快感が出る事があります。これは正常な反応で、3日程で解消されます。
  • 施術部位周辺が内出血したり、腫れることがあります。通常は2週間程度で解消されます。
  • 特に重症の方は一時的に痛みが増すことがあります。再度施術するか、数日経過すると治まります。
  • まれに施術直後や施術中に、めまい、冷や汗、吐き気がするなど、気分が悪くなることがあります。しばらく横になっていると治まりますので、ご安心ください。(血圧の変化と精神的な理由によるものです。)